ゆうやけこやけでひがくれて

夕暮れを告げるチャイムの音色を聞きながらガンダダは、夕暮れの西郷山公園で一人たたずんでいた。オレンジ色の空にはカラスは飛んではいなかった。ガンダダは思った、「そうか、都会のカラスは朝のゴミ袋から残飯をあさる鳥なのだ。」

「もうかりまっか」

見上げるとオシャカ様がいた。

「都会のカラスはどこに帰るんやろなぁ。」

「えっ」オシャカ様はヒトの心も読むのか。ガンダダは内心驚いた。

「カラスもゴミあさりが忙しくて帰られんのか、帰るところを忘れてしまったんか」

「オシャカ様...」

「知っとるとは思うが、ワシは昔王子様やったんやで。妻も子もおって、世間的には幸せやった。しかしなぁ、わしは、いたたまれん気持ちでいっぱいやった。そこで、ワシは修行にでたんや。そりゃ厳しいもんや。たとえば千日残業ゆうてな、千日間欠かさずの残業や。そして、最後の十日は、飲まず食わずで泊まり込みの徹夜や。もう目はシバシバしてな、やり終えたときはくらくらになってな。ようやく終わった、まぶしい朝焼けの中、アキバの牛乳スタンドで飲んだシロはうまかったなー」

「なにがいいたいんですか」

「そやった。そないな苦しい修行をしても結局ワシはいっときしか満たされんかった。なんでや。ワシは「そこ」から逃げようとしとっただけや。おのれでない、何かになろうとしてな。そやろ、なったと思ったら、またそこから逃げなイカン。なぁ、ガンダダ君。きみも、何かから逃げとるんと違うか。」

「ああ、オシャカ様。わたしは...」

「そうか。ようやく気付いてくれたか。そやで。カットオーバーも間近や。プロジェクトリーダーがこんなとこでまったりしとる場合とちゃうで。さっ、仕事や仕事や。」

「えっ、あの、帰るって...」

ガンダダは、とまどいながらも追い立てられるように仕事場にむかいました。オシャカ様は思いました。

「ガンダダ君、幸せやな。もう、帰るところがないことも忘れとるんやなぁ」