合理性の反撃

さぼりまくっている「市場経済はインテリジェントか」だが、今週は、株式市場において、日本のベンチャーを良くも悪くも象徴している銘柄に「合理性の反撃」とでも言える暴落が起きた。

*年明けから信用買い残が急上昇し、増加の伸びが止まったタイミング

*市場参加者による合理的水準から乖離した価格に対する合意の存在

*決算期を控えた、利益確定売りの増加。新たな買い手の減少

*株価操作といわれる不透明な価格支持の存在(あくまで憶測)

信用買い残がたまっている状況では、一定限度以上の価格変動が起きると、既に株式を所有し、追加の利益を得るために信用買いに手を出していた投資家は、損を承知の売却をせざるを得なくなる。証拠金の積み増しを要求されるためだ。既に機関投資家の多くはこの株に対しては手じまっていたため、仕掛けられた売り浴びせに対して直ちに呼応したものと思われる。それに対して、信用買い残の膨張をみると買い支えようとしている勢力が存在したようだが、吐き出され続ける売りに対して対抗できなかったようである。買い支えを行った勢力はもともと、この株を多量に抱えていた勢力であろうから、買い支えには限度があるのだ。なぜなら、プロの投資家はこの株の価格は高すぎると思っていた。そして、この高すぎるという潜在的な合意の存在を儲けにつなげる機会を窺っていたのだ。

これは、どこかで見た構図である。そう、アジア通貨危機に際して、ペッグ制維持を行おうとした当局に対して当時のヘッジファンドが行った売り浴びせと同じ構図である。支えようとする勢力が支えようとすればするほど、空売りでの売却価格がしばらくは高止まりして利益率は向上する。そして結果的に抗しきず絶好の裁定取引の機会を与えてしまうのだ。

一部、文芸春秋がきっかけであると言われているが、それは単なる偶然であろう。この銘柄に対しては、過去一貫してインターネット上ではネガティブキャンペーンが続き、今年の一月頃から、マスコミ上でもネガティブな情報がでている。盛り上がり方から見ると例の「東芝事件」と同じ様な展開である。また、文芸春秋の記事内容は過去マスコミに出た内容に比べて特に悪い内容ではないのである。違いは、具体的に取り引きされる「価格」が、そうした風説にリアリティーを与え、風説が、価格にフィードバックされるというバーチャル/リアリティーフィードバックの形成であろう。

信用買い残の急激な上昇。かれらは、株の価値を心から信じて買ったわけではなく、単に信用決済が行われる三ヶ月から六ヶ月以内に、その株を誰かに高く押しつけて儲けようとしていただけである。さて、今後来週はどうなるのかによって現在の日本でのITブームの真実が問われることになる。利ざやねらいの短期投機家は、高い授業料を払って逃げるように投げうるであろう。ある意味、健全な修正プロセスが発生するのはよいことである。ホントに会社の価値を信じている人は持ち続ければよいだけである。