日本的経営の亡霊

先週始まったとある株式の価格調整は今週に入っても停止する気配はない。信用買い残が解消されない状態では致し方あるまい。当然の調整と思う人もいるだろうし、会社の将来を信じてガッカリしている人もいるだろう。

まあ、ガッカリするなよ兄弟。Nasdaqのインターネット銘柄も40%以上暴落したこともあるんだし。

ただ、ネット株の企業の多くが投資に走っている現状を見るとき、投資を仕事にしている身ながら、危うさを感じていたことも事実である。以下のグラフを見て欲しい。

これは、法人企業統計から作成された、小売業のROAの歴史的推移である。実際には、他の業種に関しても日本企業は高度成長期以降歴史的に一貫してROA、ROEが低下してきていたのである。つまり、資産を有効活用して利益を生み出すという面では、効率は低下し続けてきていたのだ。このことを捉えつつ、今度は収益還元法という考え方を思い起こしていただきたい。「収益還元法」は、土地の価格に関して欧米では主流の考え方である。単純に言えば、「土地の価格をその土地が生み出す収益を元に評価する方法」で

価格 = 生み出す利益 / 標準的利益率

と計算する。標準的利益率が 0.1 =一割 で、家賃が年100万の物件ならば1000万の価値と考えるのだ。

さて、ここで、ポイントとなるのは、期待される標準的な利益率が低ければ、物件価格が高くなってしまうことだ。同じ100万円の家賃でも、期待収益率が半分なら、物件価格は倍になってしまう。

実は、このことが、長期視野で見たバブル崩壊の原因である。

つまり、高度成長期を通じて日本経済は、資本効率から見たら向上どころか低下し続けてきた。しかし、資産価格の側面から見ると同じ利益を上げる資産の価格が向上するということなのだ。資産価格は資本効率の逆数なのだ。

企業は資産効率を落とし続けているというのにバランスシートは改善しつづけ、その間含み資産を売却することによって利益が増加しさえする。また、銀行の投下する資金は、そうして、効率の悪い資産に変換され続ける。

しかし、このパラダイスは永遠には続かない。資産効率が標準的な金利を下回り始めると資産効率の悪い企業は金利を返済できなくなる。当初は「資産の売却」を通じての返済も可能なのだが、やがて資産は売り手市場から転化する。「誰かが、資産を効率的に使って本業で利益を生まなければならない」のだ。そしてようやく、「資産価格のほうが高すぎる」と気付くことになる。バブルの崩壊である。

去年の第三四半期、日本のネットバブルは、リーマンブラザーズがとある企業の企業価値をその「株式含み資産」で評価し直したところから始まった。先見的企業の先見的投資を評価する姿勢は正しいものだった。しかし、それは日本版含み経営の亡霊でもあったのだ。含み的経営によって、経営者は企業本来の資本効率が見えなくなる。それが全体のムードとなるならば明らかに危険な兆候である。その意味では今回のミニクラッシュは日本のIT業界にとってはよい警鐘となったのではないだろうか。

(いいえ、決して自分だけキャピタルゲインを楽しむために書いたのではありません。ちがうんだったらぁ。)