自閉症マウス

日経サイエンス五月号「妊娠初期に決まる自閉症」は、興味深かった。ポイントは、自閉症の原因は大脳ではなく脳幹の異常にあるというもので、自閉症患者の解剖所見によると脳幹の短縮と内部組織の欠落などが観察されるという。

自閉症には、特に「レインマン」以来、知的な印象があり、コミュニケーション障害として、脳の上位機能の障害とも思っていたので、この記事は意外であった。発生的には、脳幹のような基本神経系は妊娠初期20日から24日に形成されるとのことで、自閉症患者には同時期に形成される耳などに形状の特徴が観察されることもこの説を裏付けているという。

実際の患者の遺伝子系統の分析によると、複数の遺伝子や条件が複合されて脳幹形態異常が発現するらしいのだが、研究によると、HOXA1という遺伝子を不活性にしたノックアウトマウスにおいて、同様な脳幹異常が観察されるということである。つまり自閉症のマウスを人工的に作り出せるのである。

従来、機能欠損の回復や補完など、大脳のソフトウェア的柔軟性が注目された時期があったが、脳内物質の伝達性の違いが、リスクをとる行動に影響したりと、自閉症と脳幹の関連など脳のハード的な側面がわかってきたことは最近の大きな進歩である。性格などの違いも意外に、脳の基本的な部分の差異に基づいているのかもしれませんね。

おかあさん、それでは「なまけもの」とか「なまけもの」とか「なまけもの」なども、脳幹に原因があったりするでしょうか。あるいは、陽気な性格などの原因が脳幹にあれば、大脳はないけど、陽気ということもあるわけなのでしょうか。我々が高度と考える行動様式や、感情も、じつは実に原始的な仕組みかもしれない。

さて、くだんの自閉症マウスは、遺伝子をノックアウトされたうえ、自閉症は脳幹に原因があるのだから、解剖のため麻酔を打たれて気絶しても、死んで脳幹反射がなくなるまで自閉症だったわけだ。せつないね。

真夜中に鳴かぬカラスの声聞けば産まれる前の父ぞなつかし。自閉症マウスよ、HOXA1遺伝子を思うとき、きみは笑うかい?