BMI

いつものように見通しのない未来に対する漠然とした不安に肩を落としながら電車に乗っていると、近頃山手線でおなじみになった液晶画面に映る動画広告が目についた。

「12ヶ月で35Kgの減量に成功しました。やれば出来るんです。わたし、幸せになります。さぁ、あなたもっ!」

世の中には痩せれば幸せになる人もいるというのに私は胃の痛む思いで体重も減少したが、不幸せになるばかりである。

「あなたも肥満度をチェックしませんか? BMI=体重/(身長)^2 」

BMIか、肥満度の尺度だ。シンプルな式だが、ちょっと変だ。

BMIは、その数値が増えるほど肥満していることを表す指標である。どうも25以上が肥満と分類されるらしい。だから、体重に比例して増加することは理解できる。それに対して、身長が大きな人は、太っていなくても体重が増える。大人と子供で考えれば自明なことだ。だから、体重を身長の増大に対して除することで補正しているわけである。しかし、それなら身長の三乗で除するのが普通だろう。重さ=体積*密度。密度はほぼ、水の密度だろう。ここで体積は、身長の三乗に比例して大きくなるはずだからである。

つまり、BMIの計算式によると、同じようなお腹の出具合で身長が違う人たちの場合、背の高い人は「太っている」と分類されるのに背の低い人では痩せている分類になる可能性がある。

なぜ身長の自乗で除しているのであろうか?

 

太っていると言うことを、活動に必要な基本的機能を提供する、骨、筋肉、内臓の重さに対する体脂肪の重量と定義してみる。

体を支える骨と筋肉を中心に考えると

身長をLとする。体重は相似的に増えると考えるとLの三乗に比例して増える。静止状態で姿勢を維持するために手足など体の特定の部位にかかる力は、モーメントも勘案するとLの四乗に比例する。

ところで、骨と筋肉の強さは、その断面積に比例すると考えられる。同一比では、身長の二乗でしか強度が高まらない。つまり、人間は、そのままの尺度で大きくなると自分の重量を支えきれなくなってしまう。適切な強度を維持するためには骨格断面積は、身長の四乗に比例して大きくなる必要があり、これに身長を掛け合わせると次の結論が導ける。

身長をLとすると、必要な基本骨格の重量はLの五乗に比例して増大する必要がある。つまり、体が大きくなるほど、体重に占める基本骨格の占める割合が増大なければならない。

日常の運動刺激のみにより、強度維持に必要な骨格が形成されるとするならば、BMIの計算式を適用すると、活動に必要な基本的機能の割合が高いにもかかわらず太っていると分類されてしまう傾向が高くなるはずである。

ますますわからなくなってきました。日常から逃避するはずが、よけいな問題を抱え込んだ気持ちだ。

 

こんな時は発想を転換するに限る。日常生活の運動強度において人間の基本骨格は、身長に比例して増大し、標準以上には成長しないと考える。すると、骨格強度は、骨格断面積に比例する 。断面積は、身長の自乗に比例する。

すると、アーら不思議。BMIの式は、体重と、身長から算出した基本骨格強度の比であるとわかるのである。 つまり、維持可能な健全な強度に対して、現在の体重の比率をあらわした物となる。この比率が高いほど、本来の骨格に無理な付加がかかっているということになる。

複雑に考えて損した気持ちである。

BMI尺度の実用的な意味は、計算の単純さである。しかし、BMI尺度に準拠して、高血圧、糖尿病、高コレステロール症分布をとると、ある数値以上で有意に頻度が高まるということは、人間の設計強度と、設計の大きさから逸脱することに対する警告とも考えられる。 また、身長の自乗以上の体重増加は、標準的な活動における阻害要因となり、結果として運動量は減少し肥満を加速させる要因となるということなのであろう。

さて、現実の問題が解決できない場合、このようなどうでも良いことを考えて気を紛らすことにより、ますます現実の問題が複雑化されるわけである。しかし、痩せることによっては幸せに なれなくとも、日々のプチよろこびの積み重ねが人生と考えれば......

まぁ、これも一つの逃避でありますね。