MMRRPG

私は、MMORPG(assive ulti−player nline ole laying ame)のFinal Fantasy IXをプレイしている。

社会人のくせにとのご批判もあるのでしょうが、もちろんあれだ、そう、技術的検証のためなわけである。継続してプレーしているのはなぜかなどと聞くのも愚問であり、わたしは「手段のためには目的を選ばない」ひとなのだ。

さて、オンラインゲームをプレイすることに対する、社会的/金銭的見返りは”皆無”(*注1)である。むしろ、時間を浪費し、目は疲れ、社会人のくせにゲームにかまけるなど社会的信用を失うリスクさえある。それでは、なぜ多くの人々が長きにわたってプレーし続けているのであろうか?

ゲームの世界では人工的に調節されたゲームバランスの中で、苦労と達成の関係が明確である。一定の時間をかければ必ずレベルは上がり、オンラインで構成されるコミュニティーの中で一定の自己認知を得ることが出来る。 現実と異なり、努力は無駄にはならず多くの苦労を重ねて初めて取得できるアイテムなど、所持自身がステータスとなる。これによって形成される架空の社会的地位が現実の時間を投入する価値を持つのである。

プレーしていない人が見ればまったくばかばかしい話である。しかし笑ってばかりもいられない。この基本システムは”リアル”な世界にも様々な形で散見される。多数の人が一定のロールプレイに従うことにより存在しないはずの価値が具現化され、それを目的とした人の活動を喚起する。これをMMRRPG(Massive Multi−player ”Real” Role Playing Game)システムと呼ぼう。

もっとも端的な例は、大企業の終身雇用を前提とした年功序列システムだ。日本のトップ経営者の年収を諸外国と比較すると、驚くほど安いことがわかる。これはなぜ可能なのか?

  1. 大前提として、終身雇用システムは人材流動性の阻害要因となり、閉じた世界を形成し特殊なロールプレイを可能ならしめる。
  2. 年功序列システムは、どのようなプレーヤーであっても、無難な努力をしていればレベルが上がり、大規模な人員を同一のシステムにとどめておくには有効である。
  3. 地位が上がると、ステータスアイテムが与えられる。

    同期のやつより月給が100円高い

    主任と呼ばれる

    椅子に肘掛けがつくようになる

    シマを見渡せる机に座れる

    さらに、エラくなると、窓際から部門を見渡す

    もっと偉くなると個室が与えられる

    会社のやつらと飲み屋に行くと、上司扱いされる

  4. これらは、社内にとどまる限りにおいて有効

○○は、レベルが上がった! 係長になった! 椅子が肘掛け付きになった!

肘掛け付き椅子は、肩こりの予防のため長時間のパソコン操作を行うオペレーターにこそ与えられる物であるが、ロールプレイのステータスアイテムである限り、そんな例外は許されないのである。

これらは、社外の人にとってはくだらない、どうでも良いことである、わずかな区別の積み重ねと、区別に応じたロールプレイの徹底により、会社から離れてしまっては失われてしまう自己認知と満足が得られるようになるのである。また、この満足は、継続している限り保証されているので人材が社外のシステムとの間で流動化する妨げとなる。ついには報酬の多寡によっては補うことの出来ない満足の裏付けとなる。

反面、MMRRPGシステムは、あくまで架空の地位にリアリティーを与えるシステムであるため、徹底したロールプレイがなければ”リアル”さを保てない。エレベーターに乗るときに役職順に乗ったり、会議室での序列、タクシーの席順に至るまで企業でのマナーが徹底されるのは地位が実のところ空虚な存在に過ぎない裏返しなのである。人材の流動化が激しい職種ではこのMMRRPGは有効に作用しない。単に、無意味だからである。

MMRRPGにおける地位やロール(役割)はあくまで架空の物であるが、多人数が従うことにより、人はそこにリアリティを感じ始める。ルイヴィトン、プラダなどブランドメーカーは、その幻想維持のために多大な宣伝活動を行い、それによって、所持することがステータスであるという幻想が維持される。 持つ物と持たざる物の羨望、嫉妬と満足の関係、これも一種のRoleである。また、江戸時代の武士は、現代から見ればキテレツなちょんまげ頭で、町人までもが、クールなシンボルとしてちょんまげ (*注2)頭にしていた。「身分をわきまえる」という言葉に象徴されるように身分によって、とるべき行為が規定される厳格なロールプレイの社会のなせる技である。

さて会社でがんばるのとゲームでがんばることの違いは、実のところ給料が出るかどうかぐらいだろうか。でも、お金も本当にリアルなのだろうか?  そもそもお金こそ、社会全体の中で他の人にロールプレイをさせるための架空の物に過ぎないのではないか?

気をつけてほしい、もしかしたら給料もギルかもしれないよ。ゲームで儲けられるのは主催者(会社)だけなのだから。

 

*注1

RMT Real Money Trade ゲームの金銭などを売買することは除外する

*注2

もともと、ちょんまげ頭とは、武士が兜をつける際に、髪の毛があると兜がぐらぐら動いてしまうことを防ぐためにそり上げたことに始まると言われている。