ナイスアイディアの行く末

携帯を買い換えた。

ソフトウェアを買う。携帯を頻繁に買い換える。役に立たないガジェットを買う。こういうのは業界の会費みたいなものだが実際に使って見なければ見えないものがあることも事実である。W21SAは、実は、待ちに待ったEV-DO(au は、定額プランを組み合わせたサービス名称としてWINを使っている)で、BREWをサポートしている機種である。サービスとして、 EZ−ナビウォークに対応した最初のWIN端末でもある。

正直、感無量である。様々な機能はさしおいて、EZ−ナビウォークがようやく使えるサービスになっていたのだ。

新しいEZ−ナビウォークは、電子コンパスで方向もわかり、目的地の入力もしやすい。なにより、歩きながら携帯に表示される自分の位置がリアルタイムで補正され、かつ、現在地の精度も数メートル程度の誤差しかない。

すばらしー。購入後に都会や田舎の知ってる場所、知らない場所で使ってみたが、実用的な機能へと成熟している。完璧な訳ではない。でもね。そうだよ。もともとは、こんな使い方がしたかったんだよ。

PHSで始まった、基地局測定の位置確認サービスから始まって、日立の誤差1Kmある位置確認サービス。SnapTrack+GPS、@Naviのめちゃくちゃ使いにくいユーザーインターフェース、地下鉄の駅を出てから目的地入力してガイドが始まるまで10分かかって、確認毎に数分かかった日々。

つかえねぇ日々が走馬燈のように浮かんでは消え、成仏してしまうところであった。

携帯で位置が分かれば便利だ。アイディアマンがアイディアとして出すときは、いきなり理想的な姿を思い描くのであろう。だが、そのときの思いつきを実現していく過程は容易なものではない。例外条件や現実/コストの整合性、中途半端で使えない状態とユーザークレーム。提供される機能と電池容量のバランス。おもちゃとこき下ろされもしただろう。でもauの担当者よ。よくがんばったね。使える状態に育てるまでよく耐えたね。

反面、この機種以降、車につけてある、PioneerのカロッツェリアAVIC−D9900V 付属のハンズフリー機能が使えなくなってしまった。コネクターからの出力は制御信号線とアナログ出力であるはずだが、パイオニアのカスタマーサポートは、

「W21SAは、出力がUSBなので使えないんですよ」

auが出している昔ながらの車用ハンズフリーキットはつながるようなので、この説明は嘘だろうが、いやいや、こまったなぁ、ハンズフリーをBluetoothにでも買い換えるしかないじゃないか、ヘッドセット対応したアダプターも出ているようじゃないか。ふふふっ、困った困った。

うれしいのか、 困ったのか定かではないニヤケた表情になりつつ、1000円ですむ、ハンズフリーイヤホンという選択肢も捨てつつBluetoothなのは、やはり、業界の会費みたいなものだからと自分をごまかしてみたりする。だが、

Bluetooth

この「すべての機器がワイヤレスでつながって、どんなメーカーの機器も、境界無く利用できれば便利ジャマイカ」という夢の技術も、1999年頃の熱狂も去り、ようやく使えるレベルの一歩前に成熟してきたようである。すぐにでも来るといわれてから既に五年たつわけであるが。

振り返れば、「配線の煩わしさから解放される」というたったそれだけの為に払う代償は決して小さなものではなかった。

1.配線がないから、電池を持たなければならない。

2.いつでも使えるためには、常に機器相互で相手を確認しなければならない。しかも、消費電力を少なく。

3.通信だけではなく、機器の持つ機能を含めて相互で接続性を保証しなければならない。

4.さらに、機器相互にセキュリティーを保証しなければならない。

現在のネットワークが直面する問題に加えて、電力消費と無線特有のノイズ/干渉も解決しなければならない。正直、Bluetoothが普及して、様々な機器が接続されるまでの間を考えれば、それぞれの機器固有のワイヤレスソリューションの方が遙かに便利なのだ。

実際、パソコンにワイヤレス機器をつけることを考える。WindowsがBluetoothにまともに対応し始めたのはXPのSP1からであった。ただし、そのころでさえワイヤレスキーボードを使うのであればBluetoothでないものの方が遙かに使いやすかった。

まず、

a.値段が安い、量産されるオープンなものにもかかわらず、専用設計のものより高いのである

b.Bluetooth対応のものは、待機状態からキーを受け付ける状態に遷移するのに3秒程度かかる

c.相互に認識させるためのめんどくさい入力作業が必要となる

さらに、パソコンにこのBluetooth対応のセットアップをしたからと行って、たとえば、Bluetooth対応のヘッドセット(マイクとイヤホン)をつけて、かっこよくボイスチャットを行おうとしても、出来るかどうかは分からない。Bluetoothは、様々なプロトコルを使い方に関してまで規定して”プロファイル”として標準化している。故に、利用する機器が相互に同一のプロファイルをサポートしている場合のみ機能を利用可能なのだ。ところが、Windows XP SP2においても、”ヘッドセット”/ハンズフリー/オーディオProfileは、標準ではサポートされていない。マイクロソフトのBluetoothデスクトップを買っても、専用ワイヤレスキーボードセットに比べて付加されるのはファイル転送以外程度だ。これでは、ワイヤレスLANが普及している現在ほとんど意味は無いのである。

同様な問題は携帯電話でもあり、たとえばauが最初に販売したTDK社製Bluetoothアダプターに至っては、携帯電話向けなのに

ヘッドセットなど会話用のプロファイルのサポートがない。

Bluetoothでデータ通信を行う場合も、アダプター自身の電源をいちいち入れなければならない。よくBluetoothで例に挙げられる携帯をしまったままで通信など出来ない

電池が持たない

の三重苦状態なのであった。USBアダプター程度の使い勝手で、値段は10倍という商品なのだ。

ああ、どうしようもない、まったくだめだ。ただ救いはある。最初に描かれたビジョン、それが真に利便性をもたらすものであるならば、その過程の困難はやがては克服可能であろう。インターネットにしろ、携帯電話にしろ、ある敷居値に達するまでは単なるおもちゃなのだが、普及期は利便性が一気に顕在化する。

auは、EZナビウォークではよく頑張った。だが新機能は山のようにある。QRコード、文字認識、Bluetoothまだどれも、ツカエネー。まだまだ仕事は山のようにあるね。

出来上がった技術を礼賛するひとは多いが、実のところホントに楽しいのは、ボロボロの技術を改善している時なのだ。auの下請けやメーカーや企画の人たちよ、楽し/苦しい時がまだまだ続くのですね。