ライブドア

 

最近おもしろい本を読んだ。

「イエスのミステリー(Jesus The Man)」1993初版 NHK出版。著者は死海文書の研究者であるバーバラ・スィーリング氏である。超自然現象などなかったという前提で、死海文書や福音書の記述を照らし合わせながら現実のイエスの実像を探っていくという本である。

この本によると、イエスはダビデの正当な血筋であるが父親が婚約中に孕ませた(故に処女懐胎と言われた)子供であり、時にユダヤの正式な王家継承者、また時には偽りの継承者としてとして政治的に利用される複雑な出生であった。

当時、ローマによるユダヤ支配は、ユダヤの民族主義的運動を加速させつつ、伝統宗教の文化的な魅力が一部のローマ市民を引きつけるという側面も持っていた。このような背景の中で、イエスは宗教権威を伝統からはは許されない人たちに開放したために、民族主義的な集団からは激しく非難される一方、ユダヤ的宗教を西洋化を通して世界宗教化し得たとされる訳である。

この点、バラモン階層に独占されていた宗教権威を、カーストや性別に関係なく解放することにより、アジア圏における広範囲な拡大の礎を作ったブッダときわめて類似している。また、両者とも司祭/僧侶が強い権威を持ち、種族的に固定化している中で、王族という世俗権威の代表が宗教権威に挑戦しており、さらに、最終的には、世界化されたその宗派が外部で繁栄する一方、ユダヤ/インドといったローカルでの権威転覆は失敗していってしまったことも共通している。

さて、どんな社会システムであっても、長い歴史を持つ間に形式化され、独自の慣習が育成され、特権階級が育まれる。だが実は形式化そのものは一見合理性を欠くものの各種要因との細かい調整を重ねた結果の定常点であり、マニュアルである。時に「救い主」は、単純化された正論により、旧システムの疲弊をつき解放を唱えるが、閉じた世界の中では旧システムの持つ成熟した合理性の中に、埋もれていってしまうのである。こうしたプロセスは、様々なところで観察されるのである。以下の四点がその要因となる。

  1. 権威であり、反権威であるリーダーの存在
  2. 疲弊したシステムの存在と、価値観の異なるフロンティアの出会い
  3. 成熟したシステムの応用に付加される単純化された正論
  4. 旧世界内部改革の失敗と、フロンティアでの急成長

これはベンチャービジネスの成長要因そのものである。後半は、イノベーションのジレンマにも通じる要因である。

 

ベンチャー、新興宗教、きわどいアヤシさは、諸刃の刃といえようか。この観点から、昨今のライブドアによる球団買収話をみてみる。

権威であり反権威であるメシア

聞くところに依ると、ライブドアの堀江社長は、正当なエリートの系譜と目される反面、その中退という事実により、偽りのエリートとも目される複雑な経歴であった。

伝統的権威による疲弊、勃興する外部世界

一方、プロ野球は、ナベツネをはじめとした、特権階級のみがオーナーに連なる系譜とみなされるクローズな社会であったが、Jリーグやメジャーリーグという外部要因との比較において、体質の古くささが外部からは制度的な疲弊と見なされていた。

単純化された正論、メシアによる解放への予言

「買収したいという相手がいるのに、球団の数を減らすのは変じゃないか」

「提示された値段を見れば、営利企業として近鉄が売却しないのはおかしい」

「ベンチャーだからといって知らない会社をいれないとは、球界は老人クラブか?」

正論である。だが、新興宗教の教祖が怪しい程度には、堀江氏も妖しい存在であることも確かなである。

予想される結末

堀江氏が、プロ野球を変えたいと思っているかは疑問ではあるか、変えたいと思ったとしても、これだけ成熟したシステムは変わらないであろう。むしろ、有力選手を引き抜いてメジャーリーグにでも参入した方が成功しそうである。